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保存性の高いたくあん【腐りにくい理由】

たくあんは、保存性が高く未開封状態では賞味期限が長いことが特徴です。

しかし、たくあんは腐ります。

ご家庭でたくあんを漬ける方は、腐敗による食中毒のリスクを下げるために知っておくことが重要です。

なぜたくあんは腐るのでしょうか。
そもそも、腐るとはどのようなことでしょうか。

「腐る」とはどういうことか

一般的に、多くの食べ物は時間の経過とともに腐ります。

食べ物が腐る原因は、基本的には「微生物の影響」です。

食べ物を腐らせる微生物

気温・湿度・酸度などの環境によって、私たちの身の回りの微生物は繁殖します。

微生物は、人間の腸の中に100兆匹住んでいると言われており、地球上の大部分は未知のもので研究が進められています。

その微生物の作用によって、食べ物が腐る一方で、「発酵」という現象も同じように微生物の作用のことです。

発酵と腐敗

発酵と腐敗は、どちらも「微生物の力で物質が変化すること」です。

物質が変化した結果、人間にとって有益であれば「発酵」となり、人間にとって有害であれば「腐敗」となります。

つまり、人間の視点で定義が決まってきます。

腐ると食べ物はどうなるか

食べ物は腐ると、食中毒などの悪影響を私たちに与えます。

目に見える変化としては、食べ物の変色・異臭の発生・粘りの発生(ネト)・食品の軟化・包装袋の膨張・カビの発生などがあります。

それぞれの変化は、原因となる微生物の種類や、対象の食べ物によって発生の有無が変わってきます。

たくあんと腐敗

たくあんは、食品の1つで、分類では漬物の一種です。

大根のぬか漬けのことを「たくあん」と呼びます。

腐りにくい食べ物のたくあん

たくあんは、食品の中では比較的腐りにくい食品です。

未開封状態での賞味期限は、長い商品で1年近くあるものや、短い商品でも60日あります。
(開封後は冷蔵庫内に保管し、早めに食べきりましょう。)

漬物の中でも、浅漬けやキムチなどは、未開封状態で2週間程度の賞味期限です。

たくあんが腐りにくい理由

食べ物が腐るのは、微生物の作用が原因です。

つまり、微生物が作用しにくい環境であれば、食べ物は腐りにくいです。

その腐りにくい条件を満たしている度合いが高い食べ物が「たくあん」です。

腐りにくい3つの条件

食べ物が腐りにくい理由は3つあります。

「水分活性が低いこと」「酸性であること」「加熱殺菌されていること」の3つです。

少し難しい表現になっていますが、それぞれ解説していきます。

1.水分活性が低いこと

食べ物の水分活性が低いと、食べ物は腐りにくくなります

例えば、水分活性が0.94を超えると「ボツリヌス菌」という吐き気や視力障害を起こす菌が増殖する可能性があります。

水分活性とは

水分活性は、食品中で微生物が生育するために利用できる水分割合を示す指標

水分活性は、単純に食品に含まれる水分の量ではありません。上記の通り微生物が生育するために利用できる水分割合なので、水分の量と比例関係にはありません。

基本的には、水分活性は低いほど微生物は生育しにくくなります。特に、細菌は水分活性が高い環境で生育しやすくなります。一方でカビは、細菌と比較すると水分活性が低い環境でも生育します。

水分活性を低くするには

水分活性を低くするためには、大きく2つの方法があります。

(1)乾燥によって水分含有量を減らす

ドライフルーツやビーフジャーキーのように、食べ物を乾燥させることで、水分含有量が減ります

水分含有量が減れば、微生物が生育するために利用できる水分割合が減少します。

(2)食塩や砂糖の浸透圧を利用する

食塩や砂糖には、浸透圧という効果があり、野菜などから外に水分を引き出します。

たくあんをはじめとする漬物は、食塩や砂糖を利用して浸透圧の効果で野菜などをおいしくすると同時に、微生物が生育するために利用できる水分割合を減少させています。

2.酸性であること

酸性は、pH(水素イオン濃度)が3.0未満のことを言います。

多くの微生物がpHが中性である環境を好み、生育しやすくなります。

例外はあるものの、細菌は6.0~7.5程度で増殖しやすく、カビや酵母は4.0~6.0において増殖しやすいと言われています。

pH(水素イオン濃度)とは

pH(水素イオン濃度)は、溶液中の水素イオンの濃度です。

pHが低いということは、水素イオンが濃い状態のことで、酸性が強くアルカリ性が弱い状態です。

pHが3.0未満の範囲を酸性と呼び、3.0以上6.0未満の範囲を弱酸性と呼びます。

食べ物を酸性にするには

食べ物を酸性にするには、大きく2つの方法があります。

(1)乳酸発酵などで酸性にする

ヨーグルトは、牛乳を乳酸発酵させたもので、牛乳よりも賞味期限が長くなります。

たくあんなどの漬物においても、乳酸発酵によって酸性になるものがあります。

(2)酢などの酸性のものを添加する

酢は酸性の調味料です。

酢を食べ物に添加することで、食べ物自体が酸性に近づきます。

3.加熱殺菌されていること

普段口にする食べ物で、袋詰めされている商品があると思います。

袋詰めの際に真空状態になるように包装して、包装後に加熱殺菌をすることで耐熱性のない微生物は殺され、生育できなくなります。


3つの条件を満たすことが多いたくあん

たくあんは、食べ物が腐りにくい3つの条件を満たすことが多い食べ物です。

塩度が高く、水分活性が低いたくあん

たくあんは、塩と米ぬかで塩蔵しているため、大根の内部に多くの塩が含有されています。

たくあんの塩分が多い理由

その分、塩分が多い食品として健康面が懸念されることがあります。

塩分が低いと腐敗しやすく、食中毒につながる可能性が高く、
塩分が高いと腐敗しにくいが、高血圧などになりやすいので、適度なバランスが必要です。

乳酸発酵によって酸度が低くなっているたくあん

たくあんは、大根のぬか漬です。

大根を塩と米ぬかで長期間かけて漬け込む中で、ぬか床の中で乳酸発酵します。

乳酸発酵することで酸っぱい味になり、保存性が高まります

真空包装して加熱殺菌されるたくあん

たくあんは真空包装して売られているのものと、真空包装されずに売られているものがあります。

真空包装されているものは、基本的には加熱殺菌されており、菌が生育しにくい状態になっています。

保存料などを使用することも

他にも、保存料を使うことで、微生物の活動を抑える方法もあります。

保存料の使用は健康被害を懸念されており、あまり少しずつ使用されなくなっています。

保存料を使用した食品は減少傾向にありますが、食中毒のリスクを減らす目的としては有用であると言えます。





腐りにくい漬物の1つのたくあん

食べ物は、「水分活性が低いこと」「酸性であること」「加熱殺菌されていること」の3つの条件を満たすほど腐りにくいということでした。

たくあんは、塩度が高いことによって水分活性が低くなり、乳酸発酵によって酸性になり、加熱殺菌されているため、腐りにくくなっています

しかし、「腐りにくい」食べ物で、「腐らない」食べ物ではありません。

ご購入される方へ

たくあんを開封後は、冷蔵庫に入れて早めに食べきるようにしましょう。

ご自身で作られる方へ

微生物が活動しやすい温度帯を避け、低温の環境などでの管理や、湿度が低い環境で管理するようにして漬け込みましょう。