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たくあんの塩分が多い理由

たくあんは、塩分が高い漬物の一つとして知られています。

この記事では、たくあんに食塩が使われる理由たくあんの塩分が高い理由について解説します。

たくあんの塩分の高さ

たくあんは、塩分が高い漬物と知られていますが、減塩化が進んでおり、漬物の中では比較的低い塩分となっています。

現代の浅漬けやキムチ中心の漬物は、おいしさや簡便性という面が重要視されていて、塩分が高いことは求められることは少なくなっています。また、各家庭に冷蔵庫などの保存設備があり、賞味期限も一定期間あるので、保存性という面を重要視することが減っていることも挙げられます。

一方で、歴史を見てみると、保存性の高い食べ物はとても重宝されおり、保存性を高めるために塩分が多く使われていました。

そのような現状を踏まえて漬物を製造する事業者は、塩分を減らす「減塩化」を推進して、現在に至ります。

【たくあんは塩分が高い?】漬物の塩分表








たくあんに食塩が使われる理由

たくあんは、漬物の一つです。そして、多くの漬物には食塩が使われます。

たくあんも食塩が使われる漬物の一つで、食塩を使う理由は6つあります。

1.長持ちさせるため

たくあんは江戸時代に起源があると言われている食べ物です。
当然ですが、江戸時代には冷蔵庫などの保存設備はなく、また保存性の高い食べ物を大量生産することはできませんでした。

そこで、長持ちする漬物という文化が古くからあり、漬物が作られていました。

たくあんが長持ちする理由は、食塩の浸透圧にあります。浸透圧によって防腐性が高まり長持ちします。
防腐性を高めることで、冬場に収穫した大根を1年間かけて食べられるようにしたのです。

また、大根は日本国内であれば、比較的育てやすい野菜です。その育てやすさから、たくあんは日本全国で食べられるようになったとも言われています。

2.健康のため

塩分は、摂りすぎは健康に悪影響を及ぼしますが、摂らないということも健康に悪影響を及ぼす研究もあります。

塩分は、「細胞を正常に保つ効果」「神経や筋肉の働きを調整する効果」があります。

たくあんは歴史のある食べ物で、塩分を摂取して健康を維持する為に食塩を使われています。

3.おいしくするため

適切な塩味は、食欲を増進させる効果があります。

また、「塩味」として五味の一つに含まれています。
五味は、味覚の根本となる5つの要素・味です。(インドのアーユルヴェーダや、四川料理でも塩味は重要だと考えられています。)

つまり、古くから塩分はおいしさの一つとして捉えられており、人間の食を下支えしていました。

たくあんもおいしさという嗜好性を高めるために、食塩が使用されています。

4.発酵させるため

本来のたくあんは、発酵食品です。
(現在は発酵していないたくあんや、わずかな発酵しかしていないたくあんなどが多く流通しています。

食塩の浸透圧性は、選択的に菌に作用して有害菌を阻止し、有用な発酵菌の増殖を助長します。

発酵することによって、たくあんらしい仕上がりになります。

またたくあんの発酵は乳酸発酵です。乳酸発酵して植物性乳酸菌を生み出します。
植物性乳酸菌は、動物性乳酸菌とは違い、腸まで届きやすいと言われています。

5.深みのある味にするため

大根をはじめとする野菜を塩漬けにすることで、野菜細胞を脱水して塩ごろしにします。

塩ごろしによって、野菜の生活作用を阻止し、組織を柔軟にして「漬かり」の状態にします。
(浸透圧によって野菜から水分が抜けると、野菜の細胞膜の構造が変わり半透膜としての機能がなくなります。)

漬かった野菜のたくあんは、細胞内に食塩などが入り込み、深みのある味わいに変化します。

6.歯切れを保つため

食塩は、たくあんなどの漬物に含まれる一部の酵素の働きを不活性化します。

酵素の働きを不活性化することで、変味や変色や繊維の軟化を防止して歯切れを保ちます

こうしてたくあんは、たくあんならではの歯切れを生み出しています。


以上の6つの理由があり、(特に1つめの理由が大きいですが、)たくあんには食塩が使われています。




たくあんの塩分が高い理由

たくあんは、現在は塩分が低くなっている傾向にありますが、塩分が高いという印象を持たれている方が多いと思います。

たくあんに多くの食塩が使われているのは3つ理由があります。

1.素材の大きさ

たくあんは、大根の漬物です。

大根は、重量野菜に分類され、比較的大きい野菜です。

その大きい野菜に保存性を持たせるためには、大根の中心部分まで食塩が浸透する必要があります。
中心部分まで浸透するためには、浸透しやすいように大根を切って塩漬けにするか、中心部分まで浸透するように高めの塩分濃度で漬け込むか、という2つの方法が考えられていました。

たくあんが多く作られた時代は、手間がかかる点と、当時は塩分に対して楽観的な見方だったため、高めの塩分濃度で漬け込まれていたと言われています。

2.1年かけて食べるため

大根は、冬場に収穫することが多い野菜です。

冬場に収穫した大根を、次の冬に大根が収穫するまでの期間で食べるのがたくあんを食べる文化と言われています。

しかし、大根は多くの水分を含んでおり、90%以上が水分だと言われています。

食塩の浸透圧による防腐性は、食塩の微量の添加では全く効果がありません。
浸透圧によって大根から水分が出てくると、だんだんと塩分濃度は低くなって、防腐性が低下してきます。

さらに、防腐性が低下してきたころに、夏を迎えます。夏は気温が高まり、腐敗に関する微生物が活発に働きやすい環境です。

そのような環境から、たくあんを腐らせないために、塩分を高くする必要がありました。

3.減塩への遅れ

近年は、高血圧などに対する懸念から、塩分の摂取を控える減塩がさけばれています。

減塩がさけばれはじめたのは、1960年代と言われています。
その結果、厚生労働省などの発表する、塩分摂取基準は年々減少傾向にあります。

たくあんは知名度があったことと、減塩の流れに対応が遅れたことで、塩分が高いという印象が引き継がれていると言われています。




まとめ

たくあんは、保存性を高めるなど6つの理由で食塩が使われています。

さらに、大根の大きさや、1年かけて食べるという文化があったため、他の漬物と比べて多くの塩分が使用されてきました。

現在では、たくあんを減塩する技術やノウハウを持った事業者が増え、時代の健康志向に合わせたたくあんが多く流通しています。

その結果、現在のたくあんは漬物の中でも比較的塩分の低い漬物になっています。