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【干さないたくあん】塩押し大根とは?

たくあんって種類があるのをご存じでしょうか。

たくあんは、大根の漬物というのはご存じの方が多いとは思いますが、その漬け方についてはご存じでない方が多いのです。

たくあんの漬け方は、大きく3種類あります。

  • 干さずに食塩で水分を抜いた後にぬか床に漬ける方法。
  • 天日干しして水分を抜いた後にぬか床に漬ける方法。
  • 屋内で燻して水分を抜いた後にぬか床に漬ける方法。

この記事では、「干さずに食塩で水分を抜いた後にぬか床に漬ける方法」についてわかりやすく解説します。

食塩の効果について

まず、漬け方を解説する前に、食塩について簡単に説明します。


食塩には、浸透圧という作用があります。

浸透圧とは

浸透圧は、塩分濃度の低いところから、塩分濃度の高いところに水分が移動することです。

浸透圧とは、2つの濃度が違う水が隣り合わせのときに、濃度を一定に保とうとして水分が移動する力のことで、生物の細胞の働きの中で重要な役割を果たしています。

https://juken-mikata.net/how-to/biology/osmotic_pressure.html

浸透圧を利用する漬物

塩分をあまり含んでいない野菜と、塩分を多く含んでいる食塩水が隣り合わせになると、浸透圧により野菜の水分が抜けていきます。

この浸透圧を利用して、水分活性を下げることで、野菜の保存性を高めた漬物になります。

たくあんも、保存性を高めた漬物で、比較的多く食塩を使った漬物と知られています。
(実際は、印象とは逆に比較的塩分が少ない漬物です。詳しくは下の記事を参考にしてみてください。)

【たくあんは塩分が高い?】漬物の塩分表

たくあんの塩分が多い理由




塩押し大根について

塩押し大根は、たくあんとしては比較的新しい漬け方です。

もともとのたくあんは、干し大根を使用したたくあんが主流でした。
(干し大根は、収穫した大根を天日干しにして水分を抜いた大根のことです。こちら記事で解説しています。)

【干し大根とは?】天日乾燥した大根【たくあんにも使われます】

しかし干し大根は、干す手間と干す場所が必要です。
そこで、東京を中心とする地域で、干さずに大根から水分を抜く塩押し大根が作られ始めました。

名前の由来

塩押し大根の名前の由来は、「塩で水分を押し出す」ことから命名されています。

食塩の持つ浸透圧によって、大根に含まれる水分を抜いたのち、ぬか床に漬けてたくあんにするのが塩押し大根を使ったたくあんです。

塩押し大根の漬け方

塩押し大根は、漬け替えしながら水分を抜く製法が一般的です。

一押し、二押し、三押しと三回漬け替えることでたくあんにしていきます。

一押しでは、多めの食塩を使って短期間で大根を漬け込み、大根の水分を抜きます。

二押しでは、少量の食塩を使って一押しより少し長く漬け込み、大根内の水分を均等にし、仕上がりの品質を高めます。

三押しでは、保存期間に応じた食塩と米ぬかを使って漬け込み、たくあんにしていきます。

詳しい漬け方については別の記事で解説します。



塩押し大根のたくあんについて

塩押し大根は、干し大根と異なる点がいくつかあります。

ここでは大きな2つの点について解説します。

味の特徴

塩押し大根を使ったたくあんは、調味液を使用して味付けされることが一般的です。

干し大根は、漬け込んだたくあんに調味液を使わずに素材の味を活かしたたくあんが一部で流通しています。
それは、干し大根は天日乾燥している間にうま味成分が増えることや歩留まりが低いためうま味成分が感じられることなどが挙げられます。

一方で塩押し大根は、先ほどの干し大根の特徴がないことに加え、ぬか床に対する米ぬかの配合比が低いことが一般的なので、素材の味を活かしたたくあんはうま味が少なくなります。
そのため、塩押し大根を使ったたくあんは、ほとんどの場合でうま味調味料や甘味料が使われています

結果として、大根としてのうま味やたくあんとしてのうま味は感じなくなっているのが特徴です。

食感について

塩押し大根は、干し大根に比べて歩留まりが高いため、柔らかい食感です。

干し大根の最終的な歩留まりが20%~30%に対して、
塩押し大根の最終的な歩留まりは50%~80%です。
(塩押し大根の歩留まりの大きな開きは、漬け込み時の製法の違いです。)

使用する大根の品種に違いはあっても、この歩留まりの差を見ても食感の差について理解いただけるのではないでしょうか。


一般的な塩押し大根の味と食感の特徴をまとめると、
味は調味液の味を感じやすく大根らしい味のものは少なく、
歯ごたえは柔らかいたくあんということになります。

ここからは雑学のような情報です。

塩押し大根を使ったたくあんの別名

塩押し大根を使ったたくあんは、さまざまな呼び方があります。

東京沢庵

東京沢庵は、東京を中心とした関東地域で作られている、塩押し大根を使用したたくあんのことです。

東京のたくあんと言えば、もともとは練馬大根を使用したたくあんが有名でした。
しかし、年々練馬大根を使用したたくあんは減少傾向にあり、現在は地元団体によって少量ずつがつくられているのみに留まっています。

東京沢庵は、練馬大根を使用したたくあんとは別のたくあんです。

生漬沢庵

生漬沢庵は、一般的には九州地方で塩押し大根を使用したたくあんのことを呼ぶときに使われる名称です。

収穫した漬けていない大根のことを「生大根」と呼ぶので、生のまま漬け込むことから生漬と呼びます。

本漬沢庵

本漬沢庵は、本漬けをしたたくあんです。

「本漬」とは、前述の「塩押し大根の漬け方」で書いた三押しの別の呼び方です。
逆に、一押しや二押しのことは、「荒漬」と呼びます。

オッペシたくあん

オッペシたくあんは、押っ圧し(おっぺし)たたくあんです。

「押っ圧す(おっぺす)」関東甲州の方言で、押しつけるという意味です。

ドブ漬たくあん

ドブ漬たくあんは、一般的には関西にてょうで塩押し大根を使用したたくあんのことを呼ぶときに使われる名称です。

関西では、ぬか漬けのことをドブ漬と呼ぶことからぬか漬であるたくあんも、ドブ漬と言われるようになっています。

塩押し大根の種類

塩押し大根には大きく2種類あります。

皮付きの塩押し大根

本来のたくあんは、皮がついている大根を漬けたものが一般的です。

皮付きの大根の方が、たくあんらしく歯ごたえが良い特徴を持っています。

皮むきの塩押し大根

皮むきの大根は、より軟らかく調味液の味がするたくあんです。

大根の皮に汚れがついている場合の見た目を気にしたり、調味液がしみ込みやすいように皮をむいたたくあんになります。


まとめ

たくあんは漬け方の違いによって、大きく3種類に分かれます。
そのうちの一つである「塩押し大根を使ったたくあん」について解説しました。

塩押し大根は、干し大根の生産量の減少に伴い、生産量が増加してきました。

塩押し大根は、歯ごたえが柔らかく、調味液の味がするたくあんが主流になっています。

漬け方においても、三回漬け替えて作られる製法です。